2006年01月15日

司馬遼太郎の最大傑作とは?

司馬遼太郎の最大傑作とはなんでしょうか?


本 坂の上の雲
  司馬遼太郎  文春文庫

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あまりにも評価の高い作品なので読まれた方も多いと思います。軍人秋山好古・真之兄弟、文人正岡子規の三人を主人公として日露戦争を中心に明治時代を描いた一大叙事詩です。


あまりに壮大なテーマのため、全8巻の大長編になっていますが、読んで飽きがこない、というよりどんどん引きずり込まれるものです。

しかし、
かたや兄が陸軍で世界最強と謳われたコサック騎兵集団を抑え、一方で弟が海軍で全ての作戦を練り、ロシア艦隊を撃ち破るというまるでドラマのような現実。運命というか歴史の不思議を感じずにはいられません。


で、これが司馬遼太郎の最大傑作なのでしょうか?「最大」は長さではありませんから・・・。



明治時代ともなれば、様々な資料は残存し、写真まで存在している。歴史小説を書くための資料は豊富にあるわけです。



本 空海の風景
  司馬遼太郎  中公文庫

これに対して、千年以上遡る平安時代の歴史小説では、資料に乏しく、作品を生み出すのは容易なことではないでしょう。

空海については、その自作の文章、書、弟子の記述など、この時代の人物のなかでははるかに多い資料がありますが、近代の人物の資料と比較すれば、量・質ともに不十分であるはずです。

それにもかかわらず、この作品では、空海を鮮やかに描き切っています。この作品の中で司馬氏はこう語っています。



『この稿の題を、ことさら「風景」という漠然とした語感のものにしたのは、空海の時代が遠きに過ぎるとおもったからである。遠いがために空海という人物の声容をなま身の感覚で感じることはとうてい不可能で、せめてかれが存在した時代の−それもとくにかれにちなんだ風景をつぎつぎに想像してゆくことによって−あるいはその想像の風景の中に点景としてでも空海が現れはしまいかと思いつつ書いてきた。』



        遠きに過ぎる 空海の時代



まさにこの時代を、周辺の風景を描きつつ、空海を生き生きとというより、人間として生臭く読者に見せつけてくれます。


昭和五十年度芸術院恩賜賞受賞作品。
これこそが司馬遼太郎の最大傑作と言えるのではないでしょうか。




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大学時代に読み、この小説に感嘆しましたが、五十に近い歳で読み返しても十分に満足した読後感をもてる素晴しい作品と思います。





前回の記事から大変間隔があいてしまいました。その間多数の文庫本を読んでいますが、ブログを書こうと思う作品にめぐり合えず、間隔があけばあくほど中途半端な作品の書評を書けないという穴に落ち込んでしまいました。新年を迎えてしまったので、この作品を取り上げました。
もうひとつのブログばかり更新しておりました。申し訳ありません(訪れる人などほとんどいないブログなんだから、謝る必要も無いんだけど・・・)。
posted by 金魚 at 21:17| Comment(2) | TrackBack(6) | 歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントありがとうございます。真弓定夫先生の本は私も読みましたし、お話しも直接、聞いたことがあります。大変、参考になり拝聴に値しますよね。ただし、問題なのは今の食品業界、競合に打ち勝つため、差別化に必死で特定の物質が良い、悪いと強調しすぎだと思います。コンビニで牛乳の代わりに何が売られているのかを考えた時、牛乳論争はかなりイビツな議論だと思うのですが。
ところで、それはともかく、私も司馬遼太郎の本、色々読んでいるのですが、何故か、坂の上の雲と空海の風景だけ、読む気が起こらず、長年、ツンドクになっておりました。理由は不明ですが、「50に近い歳」とおっしゃる一言に大変、共感して、急に読む気になりました。ありがとうございます。
Posted by スピリッツ at 2006年01月30日 12:04
スピリッツさん、コメントありがとうございます。

『空海の風景』は、とても好きな作品ですが、司馬氏の描く『空海』は、かなりあくの強い人物になっています。天才空海に立ちはだかれた秀才最澄が気の毒になりました。
Posted by 金魚 at 2006年01月31日 00:05
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