2012年07月20日

真継伸彦の傑作   無明

本 無明
真継 伸彦   河出文庫


あまり知られてはいない小説ですが、傑作です。  

今日、7月20日で、ブログ7周年になります。絶版になってしまった文庫本ですが、これは取り上げておきたい。



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はすでに紹介しました。
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中世の崩壊を予告した応仁の大乱から、北陸に燃え広がった一向一揆の時代 ――― 越前の飢饉の村に生まれ、戦火によって孤児となった少年は本願寺の門徒に拾われ心源と名乗る。武闘と政争・謀略のただなかにあって、信仰の意味を問い続ける心源の苦悩 …… 蓮如上人、連歌師・宗祇などを配して、宗教と政治の逆説的関係を鮮やかに浮き彫りした、名作『鮫』に続く大河小説


『宗教と政治の逆説的関係を鮮やかに浮き彫りした』とありますが、鮮やかに描きだしたのは宗教の矛盾でしょう。


衆生を救うための宗教が、勢力を拡大するために俗世の政治にまみれ、変質していく。

理想を実現するために、信徒に戦を強いる。大義と物欲。

当初は信徒とともにあった指導者は教団の巨大化により、民から離れ、権威をもって組織を維持するようになる。



作者は底辺の民衆も美化はせず、

『乱世の原因は、いっさいの衆生の、人なみに暮らしたいという願望である。』

と、主人公(心源)の口を借りて指摘する。

収穫できる米には限りがあり、生きるために衆生は土地を闘い奪い合うしかない。

『士、農、工、商、非人、穢多。かかる不平等な秩序を断乎として維持し、ごく少数の人間だけが人なみな喜びを味わい、大多数の人間が桎梏に苦しむというのが、実は平和な世の実相でござりまする。言うなればこれは鬼の秩序であり、それゆえに鬼の手を借りなければ、秩序ある世の中は回復せぬのでござりまする。』



昭和57年の初版文庫本。わずか220ページ程度の作品ですが、傑作。手放せない文庫であります。


どう考えても、エログロ小説家の村上春樹や日本語のへたな大江健三郎の作品より、はるかに優れた小説だと思うのだが、世間に知られていないようだ。

              言っちまったー。がく〜(落胆した顔)


つまりは、彼らよりノーベル賞作家にふさわしいということになるのですが、題材が中世日本の宗教・政治となると、日本に精通した外国人にしか評価されないでしょうね。


せめて文庫を復活して、若者たちに読んでもらいたいものです。

               河出文庫さんよ、なんとかしてよ。



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posted by 金魚 at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 純文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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